呪われたサラリーマンの日記

40才を超えた過ぎたサラリーマンは何かと悩むお年頃なんです。

呪われたサラリーマンの日記 その17 構造改革とその手順を考える

我が社の新組織発表とそれに伴う事業所閉鎖の動きが見え始めた。
会社役員が態々事業所に来て部長、課長に説明した。
一般社員に向けては後日部長や課長から連絡があるようだ。
 
私はサラリーマン暦20年を越えるベテランだ。
過去こういったケースを何度か経験した。
その体験した内容は以下の通り。
 
ケース1:国内事業の集約に伴う撤退の場合
発表当日前にこの情報を知る人はマネジメント層まで。
一般社員は知らされていない状況で関係者全員を招集。
対象の事業に携わる一般社員を一同に集め、本部の事業部長、事業所代表クラスから説明があった。
当然ながらここに至る背景、ビジネス動向、この先に進むべき方向等の話があり
一般社員には個別に次の配属先について面談しながら決めていった。
社員は大きなショックを受けるが、次の配属先の業務内容や会社が求める期待とそれに貢献する方法等
具体的な話にまで及ぶ為、一般社員の気持ちの切替が割りと早い。
リストラではなく、次の仕事が確保されている事を伝え気持ちを落ち着かせた。
当然、ここまで積み重ねてきたキャリアも考慮されたポジションでの社内異動が確約された。
ここまで条件が揃えば大きな問題にならず、すんなり異動できた。
 
ケース2:アメリカ工場閉鎖の場合
私が赴任したアメリカの工場の話だ。
工場閉鎖の発表当日までにこの情報を知る人は工場側経営層の3名程度。
完全に情報は遮断されていた。
発表当日は市の警察が工場の入り口付近から内部に至るまで配備されていた。
警官の腰には日本ではちょっと見ないようなサイズの拳銃を装備。
パニックと暴動を恐れた対応だ。
こういった準備を行い、当日、全社員に朝緊急招集がかかった。
そして工場の日本人社長や親会社の社長から閉鎖の話をされた。
従業員は日本人赴任者を除きほぼ全員が解雇を言い渡された。
私もこの場にいた。
発表後、社長に人が群がった。
どうなる事かとドキドキしていたが、心配された暴動などは起きなかった。
寧ろ、30年工場で働かせてくれてありがとうと言う声が上がったくらいだった。
従業員は発表後、直ぐに帰宅した。
しかし、その夜社長の自宅に銃弾が撃ち込まれた。
幸いにも怪我人は出なかったが社長は生きた心地がしなかったと言っていた。
アメリカは転職が当たり前の文化だ。
再就職の斡旋もあったが殆どの人は自分で次の仕事を見つけてきた。
これを機にキャリアアップした人もいた。
次の仕事が決まり次第、どんどん人が抜けて言った。
さよならなどの挨拶は無い。
閉鎖の決まった工場でキャリアを終えると決めた人とまだ転職先が決まらない人だけが残った。
この人達と一緒に工場を閉鎖した。
非常に寂しい終わり方だった。
 
ケース3:ヨーロッパ工場閉鎖の場合
ここが一番悲惨だった。
詳しくはわからないが、社員全員にあっさり閉鎖を発表した。
その直後に暴動が発生した。
現地の社長が数日監禁され、退職金の上乗せや次の就職の斡旋などを条件にようやく開放されたのだった。
この事件をフィードバックした結果がアメリカ工場を閉める時の警官配備だった。
 
これらのケースは社員に対してどこまで真摯に向き合ったかの違いで結果が変わった。
決してお国柄の違いだけではない。
 
 
手順を誤ると社員は反発する。
我々は今、閉鎖される側として事業所統廃合に直面している。
ここまでの流れを見ると残念ながらとても良くないやり方に見える。
社長や役員から一般社員に対して直接説明が無い。
よって、会社の意思決定の意図が伝わらない。
望んで転勤する人は極僅か。
あとは渋々応じる人ばかり。
会社が転勤して欲しい人は若くて優秀な人だけだ。
こういった人材の流出は避けたい。
40歳を超えたベテランは生活の為に転勤に応じるしかない。
この人達の極一部を除き、異動先ではポストを失う。
降格処分だ。
降格や転勤が受け入れられない人は退職していく。
リストラの一環だ。
だからある程度の人が減る事に関して、既に会社は織り込み済みだ。
しかし、何人減らしたいとかの数値目標が無い。
数名でも良いから転勤拒否を理由にした自主退職に追い込みたいだけだ。
とても中途半端な人員整理のやり方だ。
 
仕方なく降格を受け入れ、転勤する今の部長、課長たちが
会社や社長、役員の思いを正しく語れるのだろうか?
役員に言われた事をオウム返しのように若手社員に伝える。
『転勤してください』『会社に残ってください』と言う。
それで、転勤か転職を迷う若手社員の心は動くのだろうか?
転勤を受け入れ会社に残りたいと思うのだろうか?
リストラの理由や意味が伝わるのだろうか?
誰がこの会社の為にと思うのだろうか?
 
事業所統廃合や人員整理は社員感情が大きく揺れる重大事項だ。
残念ながら我が社の役員は面倒な事が苦手なようだ。
うちの事業所が上手くいかなかった事に対して、役員の責任は無いと言っているようなものだ。
企業の構造改革事業所統廃合や人員削減が先ではない。
構造改革で先ずやらなければならない事は経営陣の見直しだ。
会社を率いる経営陣を決める。
その人達が方向性を示す。
この流で進めた結果が事業所統廃合であり人員整理であれば納得いくだろう。
誰一人経営陣が変わらず、組織や言う事だけを変えても本質は何一つ変わらない。
会社が何をしたいのかを冷静に聞ける社員が何人いるだろうか?
一般社員は意味の無い不要な恨みや憎しみ、悲しみの感情を抱きあふれ出るだろう。
 
まだ独立して間もない会社だ。
社長も役員もまだまだ経験不足だ。
今回のリストラは色々と揉めるだろう。
無いに越した事はないが、これを次に活かして欲しい。