呪われたサラリーマンの日記

40才を超えた過ぎたサラリーマンは何かと悩むお年頃なんです。

呪われたサラリーマンの日記 その15 スペシャリストを考える

私の部下だった人に過去どの位の仕事を同時に処理してきたのか?と聞かれた事がある。
これをどの様に受け止めてどの様に答えば良いのか分からなかった。
真面目に指折り数えながら振り返ると、中長期の仕事や短期、突発を含めて常に10以上の仕事を抱えながら日々奮闘してきた。
これをマルチタスクというのかは少し疑問があるかもしれないが、仕事が滞る事が無いように部下を手足のように使いながらこなしてきた。
よって、私が事業所集約や工場閉鎖以外の生産活動を続けていた期間は常に何かしらの仕事をしていた。

我々が若い頃は会社からジェネラリストになる事を求めらた。
何でも知っていて何でも判断できる人だ。
マネジメントスキルを見に付けるよう盛んに言われるようになった。
誰が部下だろうと組織の仕事やプロジェクトを成功に導かなければならなかった。
そういった仕事を同時並行で複数経験しながらジェネラリストとしてのスキルを身につけていった。
上司と役割を分担しながら裁量権を広げ、自分のジェネラリストとしてのスキルを磨いていった。

しかし会社は急にスペシャリスト育成に舵を切った。
ジェネラリストは時代遅れと明言され、ある分野の専門性に優れる人間がいれば良いと言われた。
ある分野の専門性に長けた人はそれに見合った格付けを与えられる。
正確にはある段階以上は昇格試験を受ける権利が与えられる。

このような人事制度に変わり、各人の専門性が急激に増えていった。
他愛も無い事でも専門性だと言い切る人が突然増えたのだ。
我々のようなエンジニアの場合、何かしらの技術を身につけて、それを専門性と言うのが本筋だ。
しかし、会議を開き、それを捌く専門性とか
各人の改善テーマの進捗を確認する専門性とか
職場のモチベーションを維持向上させる専門性等々
技術的な専門性ではなく、それとはかけ離れた専門性があると言い出す人が突然増えたのだ。
これもある意味では専門性かもしれないが、マネジメント以外の何者でもない。
マネジメントはジェネラリストの必須スキルだ。
言葉を変えただけに過ぎない。

マネジメントを無理やり専門性と言い始めたのは、部下や後輩がいる中堅からベテランに差し掛かった年齢の社員だ。
彼らは若い頃、がむしゃらに働き、技術的な専門性を身につけていった。
しかし、今の時代では通用しない専門性だったり、技術の進歩で不要になったものが数多くあった。
将来のジェネラリストやマネジメントを意識するあまり、スペシャリストとしての道を後進に譲ってきた。
彼らはジェネラリストになる為のスキルを身に付けていった結果、妙な専門性があると表現せざるを得なくなったのだ。
要するに彼らには技術的な専門性が残っていないのだ。

私の海外赴任の経験上、欧米のスペシャリストは年齢、役職、肩書きに全く影響されない。
彼らスペシャリストの言う事に間違いは無い。
何を決めるにしてもスペシャリストの意見が尊重されるのだ。
だからスペシャリストの発言は大きな影響を及ぼす。
マネージャーはマネージャーとして雇用契約され
スペシャリストはスペシャリストとして雇用契約されている。
当然オペレーターはオペレーターであり、雇用契約を変えない限り
いつまでもそのままだ。
自分の身の丈にあった仕事選ぶのだ。

日本の文化は年齢が大きく影響する。
役職や肩書きもかなりの大きな力を持つ。
場合によっては年齢によってマネージャーがスペシャリストを抑制したり、その逆もありえる。
終身雇用の考え方が根強く残っている。
会社で働き、その会社の中で自分の仕事、働き方、役割を変えていく考えが普通とされている。


我が社はスペシャリストに重きを置いた。
会社に必要なスペシャリストをどこかから呼んでくるといったものではない。
会社が言うスペシャリストを育成するという方向性を打ち出した。
それに疑問がある。
会社は社員に通信教育等を利用する機会を与え自分で勉強しろという。
これが会社がスペシャリストを育成する環境だといっている。
確かにスペシャリストになる為には勉強や訓練が必要だ。
しかし育成とは名ばかりだ。
独学での国家資格の取得や職業訓練校等に行き技術を身につけるといった事を会社は要求している。
それはこの会社の社員として使えるものでは無いものを数多く含んでいる。
この会社独自の要素技術を身につけるような事も要求していない。
全ては個人任せだ。
企業で働くサラリーマンにおいて、手に職を持ちそれで一生食っていける
こんな職人技のようなスキルは中々身につくものではない。

会社に必要なスペシャリストが何なのかを明言できない会社が
社員囲い込み、社員を育てるといった考え方を辞めない限り
会社の独自性や特徴がどんどん失われていくような懸念がある。

そんな中、会社のスペシャリスト育成環境を利用し
私はセカンドキャリアを見据えた資格取得を模索し始めている。